イントロダクション

笑って泣いて、心がじんわり温かい。人生が愛おしくなる、そんな映画が誕生した。

フリーターの葉月と女子高生の呼春の姉妹は、母の佐和と3人暮らし。14年前に女の人を作って家を出て行った、父の記憶はほとんどない。ある日、佐和から「離婚したお父さんがもうすぐ死ぬから会いに行って、ついでにその顔を写真に撮って来てほしい」と告げられる…。

「死にゆく父の顔を写真に撮る」という“おつかい”と、行き着いた先に待っていた人生の修羅場に奮闘する姉妹を通して、母の思いや家族の絆を描きだす『チチを撮りに』。日常の中に潜む人生のドラマが、ユーモアとペーソスを交えて情感豊かに映し出される。そして、自分達をひとりで育ててくれた母・佐和の誇りを守りたくて果敢に奮闘してしまう姉妹の姿が、佐和の生き方に重なり感動を運ぶ。

監督は、《家族》をテーマに自主映画を撮り続け、本作が劇場用長編映画デビュー作となる中野量太。2012年7月、次代を担うクリエイターを発掘する「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012」において、『チチを撮りに』は高い評価を受け、日本人監督として初めて「監督賞」を受賞、「SKIPシティアワード」をダブル受賞する快挙を成し遂げた。加えて本作は、「SKIPシティ Dシネマプロジェクト」第3弾作品に選出され、劇場公開が決定。国際的な活躍が期待される新進監督として、中野監督の独自の感性と視点に早くも熱い視線が集まる。

人間的魅力に溢れる登場人物達を演じるのは、魅力的な俳優陣。快活で心意気ある母・佐和の心の襞を表現するのは、『ギリギリの女たち』『ヒミズ』の実力派・渡辺真起子。柳英里紗(『惑星のかけら』)と松原菜野花が好演する、強気で行動派の姉と、じっくり型の妹の、可笑しくもリアルな掛け合いが映画を生き生きと輝かせる。共演は、滝藤賢一(『外事警察 その男に騙されるな』)、二階堂智(『セイジ-陸の魚-』)。現実を生き明日へと踏み出す、この母娘の軽やかな気概と絆が、きっと私達を元気にする。